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Colum01[2004.04.18]

サルコイドーシスの診断と治療

長井苑子

はじめに

 サルコイドーシスは、原因不明の全身性疾患ですが、主な病変部位としては肺門や縦隔(気管周囲)のリンパ節の腫れ、肺の中の病変、眼と眼の周囲の組織(まぶた、涙腺など)、皮膚、表在リンパ節(身体の外からみえるところのリンパ節の腫れ)などがあげられます。この病気が全身にいろいろな 現れ方でみられるために、正しく診断されていない場合もあるので、正確な数字ではないのですが、一年間に新しい患者さんの発生する数は、地域人口10万人あたり30人くらいと推定されています。20〜40歳代に多い病気ですが、最近では、はじめて診断される年齢が、50〜70歳代にも少なからずみられるようになってきています。病気の特徴は、原因不明ですが、類上皮細胞肉芽腫という細胞のあつまってできたものが身体のあちこちに形成されます。主に、リンパ球とマクロファージからできている細胞の集合体です。

 この細胞のあつまりは、不思議なことですが、自然に消失してしまうこともあり、病気として眺めても、自然に、病変が消えて行く場合(自然寛解)が、少なからずあるというのが大きな特徴です。一方では、時間経過とともに、治療を加えても、病変が消えないばかりか、線維化という治ることが少ない方向に進んでしまうこともあります。線維化が多くおこると、その臓器は、本来もっている働きを失うこととなり、肺ですと、酸素をとりこむ力が減るために、息苦しくなり、日常生活でおこなうような動きにも、酸素を鼻や口から補給してやらなければいけなくなります(呼吸不全)。

 サルコイドーシスを正しく診断し、その病気の勢いと、病気ができている場所の正確な特定をおこなうことによって、患者さんの年齢、ほかの病気の有無なども考慮にいれて、治療方針をきめることが大切です。

 この病気が、難病とされているのは、一部の患者さんに、肺や心臓、目、神経系、腎臓などのはたらきがひどく侵されて、心臓や肺、中枢神経系などでは、生命にかかわる重大なことになる場合があるからです。

 
診断は治療方針決定に大切

 サルコイドーシスは、上に述べましたように、はじめてお会いした時に正確に迅速に診断することが楽な場合(典型的な所見や症状がみられる場合:表1)と、典型的なものがそろっていないためにむつかしい場合とがあります。

 米国で行われた838名の組織診断(類上皮細胞肉芽腫がみつかっていること)のついた患者さんを対象とした研究では、病気があらわれる場所の頻度が、表2に示されるように報告されています。しかし、日本では、眼や心臓の病変の頻度が高いといわれています。人種による病気のあらわれかた、経過の善し悪しの差異がみられるのもサルコイドーシスの特徴です。

 診断がむつかしいと、適切な治療がされずに、早期に治療すればよかった時期を見のがすことや、治療しなくてもよかったのに、かえって、治療の薬による副作用や、不必要な外科的手術の後遺症に悩むという場合もあるのです。

 表4、3に、サルコイドーシスに時に認められる症状や所見についてまとめておきました。

 診断は、ふつうは、症状がなくて、たまたま健康診断などで、胸部X線写真上の陰影を指摘されて医療機関を訪れる場合が多かったのですが、最近では、眼の前に霧がかかったようになって眼科でみつけられるか、皮膚の変化から皮膚科で診断されるか、心電図の異常でみつけられるなど、あちこちの臓器の異常によって発見されかたもいろいろであることが、しっかりと患者さんにも、医師にも理解されつつある時期だと思います。胸部写真、胸部CT写真、肺機能検査、心電図、心臓超音波、眼科的検査、血液検査(血清アンギオテンシン変換酵素、可溶性インターロイキン2レセプター、白血球数)、気管支肺胞洗浄液リンパ球数増加、腹部超音波、腹部CT, 脳MRIなどが、実際の診断のために用いられている検査のいろいろです。これらは外来でもできる検査です。

 診断を確定するためには、縦隔鏡による生検、経気管支肺生検、皮膚生検、筋生検、骨生検、腎生検などを用いることができます。心臓からの組織診断は、リスクもあるし、必ずしも診断率が高いものではありません。

 これらの生検は、皮膚生検、筋生検、骨生検以外は入院しておこないます。
全身の病変の場所を評価するために、ガリウムシンチ、FDG-PETなどの特殊検査をおこなうこともあります。

 

治療方針の決定と治療

 サルコイドーシスの治療は、はじめに説明したように、自然経過に幅があるので、本当は、かなり経験を積んだ専門医による管理が必要です。それでも多くは、自然寛解するか安定に経過することが多いので、一般医によっても十分に管理可能です。一番問題であるのは、治療しないで経過観察することでよい場合に不必要な治療をすることです。治療は一般に、慢性に経過する病気ですから、ある程度長く行われますので、この点からも、しっかりとした方針決定が必要です。

 自然寛解の力のある場合に、むやみにステロイド薬などを加えることは、かえって、病気を慢性化させたり、進行させたりすることもありますので、経験と知識をフルにつかって、この病気に対処することが必要です。

 無治療で経過観察可能な場合:1)症状のない肺門リンパ節腫脹例(写真1)、2)CT所見上、肺野に散在する粒状の陰影が主で、肺機能検査では正常である場合、3)皮膚に病変があるが、広い範囲ではなく、日常的に不自由を感じない場合、4)肝機能検査の軽度から中等度異常のみ、5)脾臓の軽度な腫れがあるが、血液検査異常のない場合などです。

 治療が必要な場合:1)症状がある場合、2)心臓、3)中枢神経系:視野異常、聴力低下、頻尿、うつ気分、性欲低下や無月経、4)腎臓、5)筋肉、6)骨、7)気管支:喘息様症状、8)肺:咳や息切れを示す肺病変(写真2)、9)倦怠感、発熱(微熱)、疲れやすい、吐き気や嘔吐、などです。

 治療薬:標準的なものは、ステロイド薬です。いろいろな検討から、はじめの3‐6ヶ月経過をみて、治療の必要性を判断し、ステロイド薬を経口的にプレドニンで0.5 -1.0mg/kg体重の量(30‐40mg/日)を投与し、4‐6週間の治療効果をみてから、ゆっくりと減量していきます。減量中に再発することが30%くらいにあるのがサルコイドーシスの特徴ですから、この場合には、他の薬を併用して、再発を防いでいくという方法もよくとります。これには、メトトレキサートという薬がよく用いられます。週一回の投与でよいので、楽ですが、効果のあらわれは、ステロイドよりもゆっくりとしています。多くの病変に効果があるという報告もすでにだされていますし、わたしの経験でもそうだと思います。

 いろいろな薬が検討されていますが、まず、このふたつをうまく、適正に使うことに習熟していくことが、サルコイドーシスの治療のわが国における現状とその課題ではないかと思います。

 肺や心臓の病気が進行してしまった場合には、移植という方法もありますが、現実には、たやすくできるものではありません。日本では、在宅酸素療法によって日常生活の質を少しでも保てるようにしているのが現状です。

 医療費の補助がきびしくなりましたが、様々なあらわれかたをし、一部は難病化し、まだまだ診断を適正にされていない場合も多いことが考えられるので、治療をきちんとするためには、診断をきちんとすることがいかに大切かをわかっていただきたいと思います。

表1.組織診断がついているサルコイドーシス症例にみられる臨床症状、所見

  確実 かなり確実 可能性あり
肺門リンパ節腫脹 気管支肺胞洗浄液リンパ球増加 リンパ節腫脹
  肺野浸潤陰影 肺野浸潤陰影 閉塞性機能障害(1秒量低下)
  上葉線維化 拡散能低下  
  拘束性機能障害(%VC低下)  
皮膚 ループスペルニオ 隆起性病変 ケロイド
  輪状病変 結節 色素脱失
  結節性紅斑    
涙腺腫脹 盲目 緑内障
  ぶどう膜炎   白内障
  視神経炎    
肝機能異常(正常の3倍以上)CT所見での異常  
    アルカリホスファターゼ上昇  
高カルシウム血症 原因不明の高カルシウム血症 尿中カルシウム上昇 腎結石
    腎結石  
神経系 髄膜や脳幹部のMRI異常所見 MRIでの他の異状所見 原因不明の頭痛
  脳脊髄液中リンパ球やタンパク増加 原因不明の神経症場 症状 末梢神経根炎
  尿崩症 筋電図異状  
  顔面神経麻痺    
  脳神経機能異状    
  末梢神経異状    
腎臓 ステロイド反応性の腎不全 糖尿病や高血圧の場合のステロイド反応性の腎不全 他の疾患のない腎不全
 
心臓 治療反応性の心筋症 原因不明の心臓の問題 糖尿病や高血圧を伴う
  心室内伝導異状や房室ブロック 心室性不整脈 心筋症
  を示す心電図異状 心筋症 心室性不整脈
  ガリウム陽性所見    
リンパ節腫脹 腰より上部のリンパ節腫脹 新しく出現した大腿のリンパ節腫脹
  CT所見上2cm以上の腫脹  
骨髄 原因不明の貧血   小球性貧血
  白血球減少    
  血小板減少    
脾臓   検査所見のみ  
    CT、アイソトープ  
骨、関節 手足の関節ののう胞性変化 非対称の痛みの有るばち指 原因不明の関節炎
 
耳、鼻、咽喉 原因不明のしわがれ声(肉芽腫の分布と一致する) 新しくでた副鼻腔炎
    新しくでた副鼻腔炎めまい
唾液腺/耳下腺 対称性の唾液腺炎    
  ガリウム所見陽性   口腔乾燥
CPK/アルドラーゼ上昇 CPK/アルドラーゼ上昇 治療に反応する筋痛
  (治療反応性あり)    

(米国他施設共同検討成績の報告から、2001)


表2.サルコイドーシス病変があらわれる可能性のある臓器

臓器 症例数 頻度(%)
699 95
皮膚 117 15.9
リンパ節 112 15.2
87 11.8
85 11.5
結節性紅斑 61 8.3
脾臓 49 6.7
神経 34 4.6
唾液線/耳下腺 29 3.9
骨髄 29 3.9
カルシウム異常 27 3.7
耳、鼻、咽喉 22 3
心臓 17 2.3
腎臓 5 0.7
骨、関節 4 0.5
筋肉 3 0.4

(米国他施設共同検討の報告から、2001)
 

表3.メソトレキサート(リウマトレックス)による治療効果

臓器 症例数 改善症例数 改善率(%)
47 22 47
皮膚 17 16 94
7 3 43
神経系 7 3 43
関節 3 3 100
50 33 66

(Baughman RP, ら、1999)

写真1肺門リンパ節腫脹

写真2肺野病変
治療前

治療後

 

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